

阿蘇高菜は、阿蘇地域でしか生育しない、土地固有の在来品種です。熊本県の伝統野菜として認定されている阿蘇高菜は、高冷地の阿蘇の土地にとても馴染んだ作物で、高菜漬けの材料として用いられてきました。阿蘇さとう農園は、もともとこの阿蘇高菜の生産・加工・販売に力を注いできましたが、生産者の高齢化などの理由によって、耕作放棄地が増えてきていました。また、阿蘇高菜は収穫時期がかなり限られた期間なので、そのタイミングを逃してしまうと、商品としての価値がなくなってしまうのです。しかも、収穫は手作業でしか行うことができないので、高齢の農家さんにとってはかなりの重労働です。この現状をどうにかしたい。阿蘇高菜を漬け物だけでなく、もっと別な価値をつけた商品として売り出すことはできないだろうか。その発想から生まれたのが「阿蘇タカナード」です。
「阿蘇タカナード」は、阿蘇高菜の種をつかってつくるマスタードです。種であれば、タイミングを逸して収穫できなかった高菜からでも採取することができます。もちろん、種を採取する目的で栽培してもらうこともできます。私たちは農家さんから阿蘇高菜の種を買い取り、商品をつくります。つまり、種を売ることで農家さんの収入になります。種の収穫は私たちが行いますので、農家さんの負担を軽くすることができます。さらに、阿蘇高菜を栽培している畑は、猪などの害獣が荒らさないこともわかりました。こうやって、一歩ずつみんなが幸せになれる方法を模索しながら、「阿蘇タカナード」は阿蘇らしい営みとして、形になろうとしています。
マスタードは、カラシナの種からつくられます。阿蘇高菜はアブラナ科の越年草で、カラシナの変種です。このような発想から、阿蘇高菜の種を使ったマスタードづくりはスタートしました。
高菜の種は小粒ですが、小さいことで食材にも塗りやすく食べやすい。さらに、ツンとこないまろやかな辛さが特徴です。保存料などは使わず、選び抜いたこだわりの素材とともにひとつひとつ手づくりでつくっています。
阿蘇タカナードに使っている素材は、3種類だけ。
そのほかは何も加えず、素材の味わいをぞんぶんに楽しんでいただけます。
阿蘇の農地で育った阿蘇高菜の種。地域の農家さんの協力を得て栽培しています。
伝統製法でつくられている米酢を、高菜の種にたっぷり吸わせています。
熊本県の南西部にある天草産の塩。マスタードの酵素の働きを助けます。
阿蘇高菜の種の収穫からマスタードに加工するまで、すべて手作業で行っています。
収穫時に種が落ちないよう、やや青みが残るくらいのときに根本から刈り取ります。
枝付きのまま広げて、振子という昔ながらの農具でたたいて殻を外します。
落ちた鞘(さや)を集めてふるいにかけ、大きな枯れ枝などを取り除きます。
さらに目の細かさを変えていき、種だけをえり分けます。
さらしの上で何度も水を取り替えて種を洗い、むしろに広げて天日に干します。
それでも小さなごみは残ってしまうので、丹念に箸で取り除きます。
塩を加えたお酢でふやかし、辛みを引き出します。
種が程よく残るようにフードプロセッサーで粗くつぶします。
これでタカナードの完成!香辛料や保存料、増粘剤などはいっさい加えていません。
お肉やソーセージにそのままつけても美味!その他、アレンジ次第でいろんなお料理に活用できます。